阪神・淡路大震災の被災と復興計画神戸大学工学部教授 高田至郎氏 われわれの研究グループは阪神・淡路大震災発生直後から、被災状況の調査を行い、関係機関から資料を収集し、建物、供給ライフライン、高速道路の被災に関してGISデータベースを作成した。 GISデータベースの活用範囲の広さと、被災分析に貢献するGISツールの威力に感心している。 従来、震災でのライフライン被害は、末端の地中パイプラインに集中した。電力は発電設備や送電設備の基幹ラインに被害がおよび、都市ガスでは中・低圧ラインが被災した。神戸市水道では活断層を横切る基幹送水トンネルが破壊された。 通信システムでは震度6にも耐える耐震構造の地下洞道トンネルには影響なかったが、数個所でジョイント部のずれや本体でのクラックが生じた。 下水道では東灘処理場が液状化現象で完全に、その機能を停止した。 このようにライフラインシステムの上位施設に被害がおよんだことは、広範囲、長時間機能が停止したことと関連してくる。また末端設備の膨大な被災量は施設の耐震強度から考えて驚くべきではないが、量の大きさは機能復旧のための質的な対応にまで影響を及ぼした。各ライフラインの復旧に長時間を要した主因が、ここにある。 独自の指令システムを持っている電力、通信などでは被災状況と緊急対応の情報伝達は可能であったが、一般公衆電話と一部の災害時優先電話に依存していたシステムでは混乱を招いた。水道、都市ガス、下水道については被害把握が容易ではなかった。 今回の地震では復旧活動に関わる各ライフラインの相互影響が、より鮮明になったと言える。ガス導管の復旧では、上下水道管からの流入水・砂が大きな障害になった。 ライフライン事業者間の連携を図るシステムがあれば、もっと速やかに復旧が行われたと考えられる。他事業者の復旧計画が参照できれば、通電火災や復旧工事の重複による混乱は防げたであろう。また工事車両が入れない地区の情報も、事業者の相互連携があれは、別々に調査せずに済んだ。 同じ道路下にある各種ライフライン施設の情報を一元化し、被災個所や復旧状況に関する情報を交換できるシステムの必要性が明らかとなった。 今回の復旧活動の特徴は、多数の応援要員や復旧資機材が、同業の他会社や他府県から被災地に投入されたことだ。早期復旧には不可欠の方策であったが、これに関わる課題も多い。 復旧資機材の仕様が各会社で異なるため、復旧技術も含めて多少の混乱があった。例えばガス、水道管の継ぎ手の違い、あるいは発電機の周波数が違うなどだ。復旧応援者に被災地の土地勘がないため、現場の移動で時間を要した。人員の宿泊場所確保や食事の手配に多くの手を取られた。 交替で復旧に当たったが長期間の応援には体力的にも限界があり、正確な復旧計画に基づく応援要請が、ある時点から必要になった。応援隊の工事車両は、被災地の道路事情を悪化させた。地震直後には消防車や救急車が通行不能になるなど、人命に関わる事態を招く一因ともなった。 各事業者では積極的に被災時の相互応援協定などが進められているが、復旧基地の場所や移動手段などを含めて“応援の仕方”をきめ細かく検討することが必要である。 そこで阪神・淡路大震災を経験したライフライン事業者の地震対策は次のように要約されよう。 1.緊急対応と早期回復システムの事前準備。被災情報を早期把握するためには、高密度にモニタリング地震計を配置したり、自ら被災個所に信号を発信するようなインテリジェントなライフライン・システムの構築が目指されている。 さらに柔軟なリアルタイム対応策や意志決定に関連したものは、事前にマニュアル化しておくことも必要である。 早期回復システムとして、被災地をなるべく極限化して切り離し、他の地域でのライフライン供給を可能とするようなきめ細かいブロック化の早急な着手が検討されている。 2.広域バックアップ・システムの構築は幹線ライフラインシステムが破壊された際、機能を補完するシステムとして検討課題となる。一事業者の供給地域や行政区域を越えた幹線ライフラインの敷設により、災害時はもちろん、平常時でゆとりあるライフライン供給が可能になる。 3.ライフスポットの整備については、大規模地震発生の際、避難地や防災拠点にライフラインからの供給を確実なものにすると同時に、供給が停止しても自立的にライフライン機能を確保するのに役立つ。 4.幹線共同溝とライフライン・ボックスの施設・整備について、用地の確保やコスト対策など解決すべき問題は多い。しかしライフラインボックスなどは地中パイプラインの早期回復システムとして有効に機能すると考えられる。 被災地では区画整備地域を対象に施設が検討されており、一部の地域では試験的にライフラインボックスの構築が始められている。 5.老朽施設や弱体パイプラインの敷設替えや耐震化についていは、日常管理とともに耐震診断、補強の対策を早期に行うことが望ましい。 6.重要拠点施設や復旧基地の分散化については、広大なライフライン・ネットワークを一個所のセンターでコントロールする場合、システムのどこかで支障が生じた時に対応が難しい。センターが使用不能になった際には全体の機能が麻痺してしまう。コントロールセンターの分散化は有効な地震対策と言える。 今後、教訓や研究開発の成果を取り入れながら、復興計画や防災対策を具体化することが重要である。 |